ちょっと余裕の60分で、芸術と祈りが息づく奥宮までの旅へ。
日光東照宮には見どころが多く、つい時間を忘れてしまいそうですが、この「60分コース」なら、見応えはそのままに、効率よく全体を巡ることができます。
三猿や陽明門といった有名な彫刻はもちろん、奥宮まで足をのばして、家康が託した“平和の祈り”に思いを馳せてみましょう。
日光東照宮60分コースの見どころは18か所です。
滞在時間 60分コース | |
チケットについて |
④拝観受付所でのチケット購入は基本的に避けましょう。 混雑時は10分以上並ぶことがあり、60分では足りなくなる可能性があります。おすすめは事前予約>>事前予約はkkday QRコードを⑤表門で係の方に提示して入場できます。※チケットには有効期限があります。 |
目安滞在時間 |
|
ここに注目! | 五重塔では、全体を撮るだけでなく、1段目の屋根下にも注目を。四面に3体ずつ、干支の彫刻があります。
神厩舎では三猿(見ざる・聞かざる・言わざる)だけでなく、全8面・16匹の猿のストーリーを見てみましょう。 陽明門は彫刻だけでなく、天井画(表と裏)の「雲竜図」も必見。 眠り猫の裏側には、猫を恐れず遊ぶ2羽の雀が彫られています。 奥宮の宝塔前には、鶴と亀が不思議な姿で並ぶ彫刻があります。見逃さずに! |
トリビア | 五重塔の中心に通る「心柱(しんばしら)」は地震対策として地面に接しておらず、東京スカイツリーにもこの構造が活かされています。※塔内の見学は特別公開日のみ。
陽明門の柱は12本ですが、うち1本だけ模様が上下逆の「逆さ柱」。完全を避けるための遊び心とも言われます。 眠り猫の裏に彫られた雀は、敵(猫)がいても平和に遊べる世界=家康の平和の願いを象徴しています。実は猫は薄目を開けており、「見守る眼」との説も。 奥宮宝塔の前の「鶴と亀」の彫刻は、長寿と繁栄の象徴ですが、なぜか不思議な形状。東照宮の謎の一つです。 |
Contents
第1章:結界を越える入口で歴史の空気を吸い込む
神橋:東武日光駅から約1.5km(徒歩約20分)
①表参道
輪王寺から石鳥居までの約200メートルは、神聖な空間に足を踏み入れるための大切な参道です。両脇には見事な杉並木が連なり、心が自然と引き締まります。
途中には「東照宮」と刻まれた社号標が立ち、これは大正13年(1924年)に渋沢栄一が揮毫したもの。歴史好きにはたまらないポイントです。
社号標(渋沢栄一書)
②石鳥居
高さ約9メートル、柱間約6.8メートル、柱の太さは3.6メートルもある堂々たる石鳥居。これは1618年、筑前藩主・黒田長政が奉納したものです。
京都・八坂神社、鎌倉・鶴岡八幡宮と並ぶ「日本三大石鳥居」のひとつとされ、石を組み合わせた耐震構造になっています。正面には後水尾天皇の筆による「東照大権現」の扁額が掲げられています。
手前の石畳が末広がりに敷かれていることで、鳥居がより大きく見える“パースペクティブ効果”が生まれています。
③五重塔
1650年に建立され、1818年に再建された重要文化財で、高さは約36メートル。朱塗りの塔に緻密な彫刻が施され、フォトスポットとしても人気です。
中央には「心柱(しんばしら)」という太い柱が通っており、地面に接せず浮いた構造。この設計が地震の揺れを吸収する仕組みで、スカイツリーにも応用されています。
ちなみに、2011年の震災でも無傷。塔内見学は特別公開日のみ可能なので、外観をじっくり楽しみましょう。
④拝観受付所
チケット購入、パンフレット配布、御朱印授与はこちらで。春や秋の繁忙期は10分以上並ぶこともあり、QRチケットや事前予約が便利です。
スムーズに回るには、あらかじめチケットを用意しておくのが吉。60分コースでは時間を有効に使いたいところです。
第2章:東照宮らしさ満点の彫刻ミュージアム
⑤表門
朱塗りが鮮やかなこの門は、江戸初期・寛永年間の建造。別名「仁王門」と呼ばれ、両脇には高さ4メートルの仁王像が睨みをきかせています。
右の「阿形(あぎょう)」が口を開け、左の「吽形(うんぎょう)」が口を閉じる対の像で、災いを門の外に退ける守護神の役目を果たしています。
また、門には虎・獅子・獏(ばく)などの霊獣彫刻が82体も!門をくぐるだけでワクワク感が倍増です。
表門の両脇に、仁王像が確認できます。
⑥三猿(神厩舎)
表門を入るとすぐ右手に下神庫が、左方面(陽明門方向)を見ると、左に新厩舎が、右に上神庫が見えます。
右の建物が上神庫:通路を挟んだ正面が神厩舎になります。
神厩舎
猿は馬を守る存在としての役割を持ち、古くから「猿が馬の病気を治す」という信仰がありました。
神厩舎の外壁には、全部で8面・16匹の猿の彫刻があります。中でも有名なのが「見ざる・聞かざる・言わざる」の三猿。
この一連の物語は、母猿が子猿の未来を案じ、善悪を教え、自立を見守る…まるで人間の成長ストーリーのよう。
恋愛、結婚、そして命の誕生まで、家族の絆と人生の流れが、静かに語りかけてきます。
⑦想像の象(上神庫)
三神庫とは日光東照宮にある三つの倉庫を指し、下神庫、中神庫、上神庫の総称です。主に祭具や行列に使用する道具を保管するためのものです。
実際に象を見たことがない狩野探幽の絵をもとに彫られた「想像の象」が2頭並んでいます。耳や足の形がちょっとユニーク。
象の左横には「獏」に似た謎の霊獣も彫られていて、想像力に満ちた当時の世界観がにじみ出ています。
第3章:陽明門がクライマックス!“見惚れるスポット”が続出
⑧陽明門
ついに登場、東照宮のハイライト!陽明門は「日暮門」とも呼ばれ、「一日中見ていても飽きない」と言われるほど。
高さ約11m・幅約7mの二層構造に、金箔と極彩色の装飾、そして508体もの彫刻がぎっしり。聖人、子供、霊獣……一つひとつに物語が宿ります。
中央には家康公の神号「東照大権現」の扁額が。まさに日本の職人技が結集した門です。
午前の日差しが当たった陽明門
⑨陽明門・逆さ柱
陽明門には12本の支柱がありますが、そのうち1本だけ、彫られた唐草模様(グリ紋)の向きが上下逆になっています。これが「逆さ柱」です。
これは「未完成の美」を表したもので、日本の美学においては、あえて完全に仕上げないことで深い意味や余韻を残すという考え方に通じています。
また、「魔除けの逆柱」とも呼ばれ、建物は完成した瞬間から崩壊が始まるという言い伝えに基づき、あえて未完成のままにすることで災いを避けるという願いも込められています。
⑩陽明門・天井画
門の表と裏、それぞれの天井に「昇り龍」と「降り龍」が描かれています。昇り龍は北側(内側)、降り龍は南側(外側)に。
江戸の絵師・狩野探幽またはその画派によるとされ、特に昇り龍は探幽本人の筆といわれます。動きと質感が見事で、空気までもがうねって見えるほど。龍の上昇・下降は、天と地の循環を表すとされ、門の格をさらに高めています。
上:降り龍(外側)/下:昇り龍(内側)
⑪唐門
白く塗られた胡粉仕上げの唐門は、黒紫の象嵌や蒔絵で装飾された、静かな威厳を放つ門です。
611体の彫刻の中には、中国・舜帝が臣下に拝謁する場面や、左右の昇り竜・降り竜など、見どころ満載。
本殿への入口として、唐門は陽明門と対になる存在感を放っています。
唐門の裏が御本社(拝殿と本殿)になります。通常の拝殿前のご参拝ではなく、唐門の前の参拝になります。
⑫眠り猫
唐門の上、さりげなく横たわる木彫りの猫。サイズはわずか25cmですが、これが左甚五郎作と伝わる「眠り猫」です。
裏側には2羽の雀が戯れており、天敵同士が共にある姿から「平和の象徴」とされています。
近年の修復で、実は猫がうっすら目を開けていることが判明。家康の墓所を守る番猫だったのかも?
⑬日光東照宮の御朱印
陽明門を入ってすぐ右(眠り猫からは左手)の社務所から、御朱印をいただきます。
社務所(左の建物)
第4章:眠り猫の先は?いざ家康の眠る奥宮の謎へ
⑭坂下門
ここから先は奥宮エリア。坂下門の鶴や牡丹の彫刻は、長寿や繁栄を表す縁起物として知られています。
この門が、家康公の眠る場所への入口です。
⑮奥宮参道
207段の石段は標高差約40m。両側に杉がそびえる静かな参道で、石段には日光特有の御影石が使われています。
一段ずつ丁寧に加工され、寒冷地に合わせて凍結対策も施されています。歩きながら、時の重みを感じてください。
⑯奥宮拝殿
寛永13年(1636)建立の拝殿は、黒漆と銅板葺きの厳かな建物。ここは徳川家康を祀る神聖な空間で、歴代将軍だけが入れた場所です。
拝殿の奥には、家康公の墓所・宝塔が静かに佇んでいます。
⑰奥宮宝塔
現在の宝塔は、1965年の東照宮350年祭の際に再建されたもの。地震で壊れた初代木造に代わり、青銅・唐銅製で堅牢な構造です。
台座は八角五段、塔は三段構造。その前には鶴と亀の彫刻もあり、「影の動きが埋蔵金の場所を示す」という伝説まで…!
⑱奥宮叶え杉
高さ約20m、樹齢400年の大杉は「一つだけ願いを込めると叶いやすい」と伝わるパワースポット。根元には祠もあります。
お守り「叶鈴守(かのうすずまもり)」は白・桃・青の三色から選べ、お土産としても人気です。
[奥宮の御朱印]
奥宮拝殿の横に置かれている場合は、初穂料を料金箱に入れて「書き置きの御朱印」をいただいてきます。
日光東照宮60分集中ガイドと見どころ解説[まとめ]
日光東照宮を60分で巡るこのコースは、豪華絢爛な彫刻美から静けさに包まれた奥宮まで、変化に富んだ見どころをテンポよく体験できる構成です。
途中には、見る者の心を和ませる三猿や眠り猫、そして陽明門の細密な彫刻の数々。足をのばした奥宮では、自然とともに佇む家康の墓所に、武将としての人生を超えた「平和の祈り」を感じることができます。
華やかさと静寂、技巧と信仰。そのどちらも味わえる60分の旅路が、あなたの中に新しい日光東照宮の印象を残してくれるはずです。